リングテイル シリーズ / 円山夢久


リングテイル―勝ち戦の君 (電撃文庫)
リングテイル〈2〉―凶運のチャズ (電撃文庫)
リングテイル〈3〉―グードゥー狩り (電撃文庫)
リングテイル〈4〉―魔道の血脈 (電撃文庫)

作者: 円山夢久
出版社/メーカー: メディアワークス
メディア: 文庫
発売日1: 2000/02 2: 2000/08 3: 2000/12 4: 2001/02
第6回電撃ゲーム3大賞の大賞受賞作品である「リングテイル 勝ち戦の君」と、2〜4巻で二部構成のようなお話になっているので 2巻を読み始めるとついつい先が気になって…結局一晩かけて4巻まで読破してしまった…眠。


それまで電撃文庫というレーベルそのものに触れた事がなく、アニメやゲームのノベライズのようなものだとばかりだと思っていた事を激しく後悔した作品です。


私は、それほど「ファンタジー」というジャンルのものを読んでいないのですが、魔法(もしくは 常識ではあり得ない様々な現象を引き起こす力)を どこでも使える・何でもできてしまう 都合の良いものとして描かない事は、ファンタジーを陳腐に見せない絶対条件だと思っています。どんな世界にも その世界なりの物事の理があった方が、より魅力的に思える。


・・・・・以下存分にネタバレ・・・・・

リングテイルの主人公は魔道師見習いの少女、マーニです。
彼女の徒弟としての日課は、魔法の杖を振ることでも、呪文を覚えることでもなく、絵を描く練習でした。見たものを出来るだけ正確に、それこそ質感や光と影までしっかりと描く という観察力や写実力は、幻影を作り出す際に必要不可欠な要素となる。


もちろん設定画が曖昧な部分もありますが(特に2〜4巻は解けなかった謎も色々…)、どこぞのRPGじゃあるまいし、魔法はMPがあれば使えるとか、レベルアップすれば それに見合った新しい呪文が自然に頭に入ってきちゃって便利〜なんていうのは、やっぱり 読んでいて入り込めない。こうした独自の設定(と、それを自然な形で著す文章力)が きちんとある作品に惹かれます。


勿体無いな、と思うのは1巻と2〜4巻を結ぶものが ちょっと弱いこと。
作品の性質上仕方の無い事かもしれないのですが、あのままでは円環の始まりになってしまった護符がマーニのドジによって 生まれてしまったことになる。確かに、マーニはフィンダルに「待ってます」と言っただけで「助けます」とは言っていないのだから、必ずしも護符の今後の作用について考えなければならない訳ではないけど…あれだけ慕っていたフィンダルへの思いが薄れてしまっているように思えます。…その護符をマーニに託したのもフィンダルなのだから、あれはあれで「円環」なのかも知れないけど。


ただ、キャラクタの魅力は1巻から替わらず。
個々の魅力よりも、集団やひとつの固まりとしての魅力の方が勝っているような気がします。相変わらずのマーニの傍観者っぷりに苛つく場面はあれど、前回より好きになった と思う点が見当たらない…。


魅力がないわけではないのに…良い子だし、応援したくなるんだけど、最初から最後まで大きく揺れることがないので、それ以上の感情移入できなかったです。逆にチャズは中々本心が見えなくて面白かったのですが…最後の行動がよく分らなくて曖昧になってしまいました。


最後に、醜いもの・恐ろしいものを容赦なく徹底的に、そして文章に忠実に描く山村路先生の挿絵は素晴らしいと思います。変な雑念が入らなくて済みます(苦笑)。


世界の命運がかかっているわけでもなく、特に派手な仕掛けもなく。ライトノベルとは思えないほど手堅く地味な展開かもしれないけど、それでも 読んでいて純粋に「面白い!」と感じる作品でした。