パラケルススの娘 4 緋袴の巫女 / 五代ゆう

転げまわる程 楽しんで読んだ1冊です。
このシリーズは、いわゆる萌えキャラクタが萌えシチュエーションで活躍するお話だから 流れに逆らわず楽しもうとか思ってたのに、今回の舞台設定(時代背景、権力の移行、跡部のお家騒動、身分違いの恋)、特に第一巻の英国の描写を思わせる緻密な書き込みにぞくぞくしました。

このシリーズ、イラストの岸田メルさんの画力がどんどん上がっていくのも見所のひとつだと思います。巫女さんがやたらえろかったり、睦月さんがやたら美しかったり、レギーネのスカート丈が長めになってたり。作家さんが好きで買い始めた作品ですが、今ではカバーもピンナップも楽しみで仕方無いです。

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・* 以下ネタバレ *・
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さっき読了して勢いだけで感想言いますが多華さま可愛すぎ…!
薄幸気味(傀儡、飾り物扱い)の強気美少女…てゆうかツンデレでお嬢でペタンコ(但し発展途上)で清き乙女でガチ巫女ですよ。そして ちびっこ上位の主従関係で相手の男は完全に至上主義。周りはきっとドテカボチャ(ライムンドゥスを思い出す)。

美弥子さん*1派の私としては、血縁とは言え、キャラが被るのは勿体ないなあと思っていたのですが、美弥子さん以上の萌えがそこにあった。

抱きかかえられたまま平手打ちだの、膝枕してもらいながら報告だの、「ばか」とか「私のものだ」とか…個人的にツボなところをぐりっぐり突かれてドキドキしながら読んでました。ホント可愛いよ この二人。

しかしストーリーそのものは とても切ない結末でした。今回はシリーズ第一巻よりも過去のお話で、なおかつ前巻で ある程度の結末が見えていた事もあって覚悟はしていたけど…実際文章で読むと凄い盛り上がってしまいました。

派手で壮絶な戦闘シーンの後、ひとり強くなった(ように振舞う)多華と、彼女の知らないところで ひっそりと人間で無くなってしまう睦月の流す涙が、心をえぐる。読了後、3巻を手にとって、しみじみとしてしまいました。

最後のクリスティーナとの問答は多少詰め込み過ぎな感もありましたが、多華と睦月を繋ぐものが 崩れて行く様子が強調されていて良かったです。少しずつでなく、一気に暴かれていく睦月の所業の、その二重、三重の裏切りの末に得たものを、多華に差し出す場面が特に。

肉親を殺し立場を失っても、その鎖さえ断ち切れば 大事なひとの「自由」が得られる。彼女が何気なく口にした「わたしの喜ぶようなことを(言ってみろ)。」に対する応えが、このラストシーンにつながるとは思ってもみませんでした。

結局 彼女は、それに縋ることを良しとしなかった。それは言葉通りに義性にしたもの、背負わせたものに対する想いかもしれないし、もしかすると 当主の座にある者と、分家の中でも一番新しく弱い血筋の、更に追いやられた立場の者の背負うものの違いだったのかもしれない。それでも、お互いを想っているのに、幸せになれないのが辛い。

色々と勉強になる巻でもありました。ヴァンパイアの描写に中華街の毒々しい不気味さを持ってくる演出が素敵。遊郭のシーンにも出てきましたが、相変らず歌(唄)の使い方も絶妙です。このシリーズ、萌えのカバー範囲も広いけど、呪術から錬金術までオカルト(?)分野のカバー範囲も広いです。五代先生 何でも来いだなあ。

他にも、脇キャラ(忍くん&館岡どん)が魅力的だったり、章タイトルが いつも以上に素敵だったり…あと 遼太郎の能力についても言及されていましたが、何かもう 上の二人のドラマでいっぱいいっぱいになってしまいました。睦月さんの今後の活躍に期待。

*1:主人公、跡部 遼太郎の許婚。高飛車系ツンデレお嬢でペタンコで、ダメ料理人。