しろがねの誓約 / 菅沼理恵

ファンタジーが読みたい、とボヤいていた私に 友人が薦めてくれた1冊。
手にとってしげしげと見つめながら、その見慣れない装丁に もしかして、もしかしなくても自分は角川ビーンズ文庫を手に取るのは初めてなんじゃないかと考えてしまいました。まるマ!シリーズがこのレーベルなのは知っていたけれど、実際に読むのは初でした。ビーンズ文庫デビュー(笑)。


この本は、さらりと読めましたが、あまり入り込めるお話ではありませんでした。


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・* 以下ネタバレ *・
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ヒロインの白雪のキャラクタに共感しにくかったのが一番の原因でしょうか。
父親である朱月を失い、そこへ迎えにきた男に警戒心なく会話をしてしまう辺りで首を傾げてしまいます。長く旅を続けてきたことを差し引いても、あの状況で「〜な気がする」「〜ように聞こえる」というだけで 淀みなく会話ができてしまうものかなぁ。


彼女は自分の力不足を自覚していながらも、他人の言葉に乗せられて色々な事をこなしていってしまうので、調子が良いなぁと思わずにはいられない。その勝気な性格は嫌いじゃないし、彼女が玉砕せずに上手く物事が運ぶ事で安心はするんだけども。


それから、白雪自身は異邦のものではないので、彼女には舞台となる国の「常識」がある程度は理解できている事。それが説明されるシチュエーションが唐突なので 異邦人である読者が上手く飲み込めない。せっかくの作りこまれた設定(世界観)が地の文や会話の中でさらりと流れていってしまっているのは勿体ない気がします。


…あとは、伏線が多いせいかもしれません。
それもそのはず、このお話はまだ序盤なんですね。次巻からは今回出てきた長汀の太子に加えて、最後で浅緋が迎えに行っていた男(=「埋葬」されたはずの朱月)が敵になっていくようです。


男性キャラはネオロマ系よろしくバラエティ豊かです。
私は黒曜が好き。コンビなら黒曜と琥珀。挿絵は西洋ファンタジー風なのに、文章の語句や表現が東洋(含む和風)ファンタジー寄りなのは、ちょっと戸惑いますが それも意外性があって面白いかも。