朽ちる散る落ちる / 森博嗣
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/07/15
- メディア: 文庫
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森先生の手腕というか…仕掛けの規模は大きすぎる。事件のトリックが明かされる時、文章そのもののトリックに気づかされた時、物語を読む読者を鳥瞰しているような ずっと手のひらの上で踊らされているような、奇妙な感覚に陥ります。
…その感覚が気持ちよくて、読みつづけているのかもしれないけど。気落ちよく騙されたくて(笑)。
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・* 以下ネタバレ *・
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今回の話は、とにかく出来事を繋げることができなかった。
Vシリーズも「気さくなお人形、19歳」も読んではいたので資料不足という訳ではなかったけど…それにしたって難しい。あの紅子さんが その解決方法(考え方)に悩んでしまうような問題を理解できるはずが無い、と 半分投げやりになってしまいました(苦笑)。
「落ちる」部屋のトリックは、部屋自体に仕掛けがあることまでは想像できたけど 作用する方向が違っていて悔しかったです。単に「傾く」(=部屋の縦横が入れ替わる)だけだと思っていた。
ただ、今回の事件は色んなものが絡んできていたので、紅子の「説明」が終っても すっきりしませんでした。機関車模型の仕掛けは面白かったけど、プリンタから証拠物件(当事者のメッセージ)が出てきて あれ、とあっけなさを感じてしまった。
でも、練無が纐纈の事を話すシーンで、じわりと涙が出てきました…最近 涙もろくなってしまったような気がする(苦笑)。「気さくなお人形、19歳」の何ともいえない切なさが気に入っていたので、練無と纐纈のエピソードが出てきて嬉しい反面、周囲の勘ぐりと練無の純粋さの差が心地悪かったです。でも、そこで紫子にきちんと つつかせているのが森先生らしいです。
今回は、話よりも人間模様が面白かった。