淋しい狩人 / 宮部みゆき
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/01/29
- メディア: 文庫
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どうしても思い出せなくて、手当たり次第に手持ちの宮部作品をぱらぱら捲り、ようやく思い当たったのが この短編集「淋しい狩人」に収録されている同名の短編の、ある妄想にとりつかれた若者だった。
実はこの本は、高校の頃に読んでいる筈なのですが、内容について 殆ど思い出せなかった。登場人物や各話のキィワード(本棚いっぱいの同じ本や、名刺の挟まれた文庫本など)は覚えているのに、それが どのように物語に関わってくるかを全然覚えていなくて、そんな自分にびっくりしました。
という訳で、再読ですがゼロから楽しんだの同じようなものでした。この短編集の中にある「うそつき喇叭」という小説は、吐き気がするほどタイムリーでした。あまり話題にしたくないけど、こういうネガな話題も きちんと それ相応の結末をつけて、ひとつの大きな流れの中に組み込んでいくところが良い。
作中に登場する古本屋に関する描写で「ここに古本を買いに来るお客さんたちは、愉しみと夢を求めているのだ。*1」という一文がありますが、この書店の描写は、そのまま宮部作品、ひいては小説や映画に対する私の思いと重なります。社会的な問題を扱っていても、非現実的なファンタジーでも、根底にある愉しみたいという気持ちに違いはないと思うんです。ほんの少しの現実味やシビアさを、作品全体とのバランスを考えてビシリと決める、こういう巧さに憧れます。
*1:「六月は名ばかりの月」より