迷宮百年の睡魔 / 森博嗣

迷宮百年の睡魔 (新潮文庫)

迷宮百年の睡魔 (新潮文庫)

2日かけて読了。
前作「女王の百年密室」を読み終えてから1年以上あいているので、ミチルの独白とロイディとの特殊な会話についていけず…途中で 前作を読み直そうかとも思いましたが、こっちを途中で止めてしまうのが勿体無くて、我慢して最後まで読みました。


ミステリ、というのでしょうかこれ。
殺人事件を解決するけど、それは犯人を逮捕するためでも裁くためでもない。そういう倫理観(現実世界のモラル)を持ったキャラクタもいるにはいるけど、本筋は そんな一般的な感覚から離れたところで進んで、結果的に「問題」は「解決」する。解決というよりは「解答」がある、という感じかなぁ。


ひとが「生きている」という状態の定義の難しさ。
ロイディの中に在りながらアキラの身体を器にし「人間」として生きているミチルと、その分離構造へと自分の箱庭の人々を作り変える女王メグツシュカ。


前作でアキラの身体とミチルの精神というのだけでも驚いたのに、そもそものミチルがオリジナルではなかった事が発覚しましたが…あれだけ思考を垂れ流しにしておいて、そう来たか。読者はミチルの意識とともに歩んでいくしかないのに、当のミチルが一番 得体の知れないものになりつつありますがな…。


それでも、ウィットに富んだ会話や パラレルとは言い切れない現実味(と合理性)のある世界観に、やみつきになってしまいます。お気に入りのシーンは、ロイディとパトリシアのウォーカロン同士の会話や やりとり。特に、掌でパケット通信するシーンは とてもツボに入りました。何だか可愛いです。


追記:はてなのレビューと殆ど同じこと書いてて凹んだ…_| ̄|● ゜。