ヘンリー・フール

ヘンリー・フール【字幕版】 [VHS]

ヘンリー・フール【字幕版】 [VHS]

1997年の作品で、リーアム・エイケンの銀幕デビュー作。
リーアムが登場するまでが長いです。途中で早送りしようかと思ったくらい長いです。そして早送りしようかと思う程度に微妙なお話なんです。


「変わり者」のサイモン・グリム。
特に障害があるような描写はないけれど、あまり周囲に溶け込めていない青年。そこにやってくるヘンリーは、幼女強姦の罪で逮捕されて刑務所をでてきたばかり。彼らの周囲を堕落した性行為をはじめ 鬱、暴力、ドラッグ、虐待…見てて吐き気のするような要素がたくさん取り巻いている。そもそも見たいと思った理由が不純なんだけど、これだけ 腐ったものがてんこ盛りだと引きます…。見るんじゃなかった、という気持ちが中盤までありました。


でも、話が終わりに近づくにつれて、その考えを改めた。
社会の汚い面は置いておくとして、最終的に描かれたもの…友情と愛情、相手を思いやると言う事に対して、とても真摯な脚本だったから。


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・* 以下ネタバレ *・
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サイモンの才能を見出し、彼の詩の素晴らしさを世に知らしめるために あれこれ努力しくれたヘンリーだけど、彼自身の作品は評価されないものでした。そこから生まれる卑屈な精神。羨み、妬み、非道い言葉でぶつかりあってしまう2人。それでも世間に認められた者とそうでない者である事に変わりは無く、彼らの上下関係ともいえる立場が逆転してしまう。


自分の罪を知る少女に、性行為を代償に義父を殺して欲しい と依頼されるヘンリー。DVでボロボロになった母子を見て、彼が何を思って行動したのか。真意は描かれなかったけれど、結局 彼は暴力男を殺してしまいます。


裏切ったはずのサイモンを始め、妻と子ども、カフェの店員…みんながヘンリー・フールを国外に逃がそうとする。理由を語ることも、恩着せがましくすることもない。この映画の最初からある独特なテンポを崩さず淡々と行動するので、この辺りで早送りせずに見てよかったな と思いました。


身分を偽りって、ついに飛行機がすぐそこまで迫った時に、立ち止まってしまうヘンリー・フール。ふいに画面が切り替わって、ヘンリーが両手に荷物を抱えたまま必死に走るシーンで映画は終わります。エンディングのエンド・クレジットに切り替わってから胸が熱くなり、涙が出た。


HENRY FOOLは確かに「バカ」な男だった。
だけど、あのまま逃げていたら、彼は本当の意味で「愚者」となる。
ひとにオススメはできなけれど、悪くないよ、と言える映画だと思います。あ、でも何か食べながらみてると痛い目みるようなシーンがちょこちょこあるので要注意。うええ。


で。肝心のリーアムですが。
前述したように、登場するまでが本当に長くて…ようやく出てきたと思ったら、初っ端から半ズボンに体操座りでどうしようかと思ったよ!(←…この女どこまでも。) 透きとおるような白い頬に泣きそうなくらいタレ目なので、膝をかかえてつま先で車の玩具をいる様子は 切なさや寂しさの権化のような子になってました。でもそこが可愛い。


大人たちが意地をはって憎んでしまってできない事を、彼はひとりでやり遂げる。純真無垢な少年だからこそできた行動だなぁと思います。損得勘定なんてない、穢れ無き眼差しで大人を見上げる姿は まさに天使です。


だから、役としては ともて良いんだけど…これ18禁映画だし。すとりっぷ劇場のおねーさんのぱんつ引きずりおろして(させられて?)るシーンなんかはがあるので、ある意味では貴重な作品です。