アヒルと鴨のコインロッカー / 伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

伊坂作品2作目です。
残念ながら「死神の精度」のような読後感はなかったです。胸の悪くなるような事件が含まれているせいです。どうぶつぎゃくたいはホント、だめです。ひと(大人)がしぬのよりだめ。結構ダイレクトに書かれていてびっくりしました。

でも、お話そのものは好きです。各章で過去と現在を交互に描いていたので、何かそういう仕掛けがあるんだろうな と思って読んでいたので、ここか!と思えたのは嬉しかったです。必ずしも正解を導き出すのが正しい読み方ではないけど、罠とわかってて飛び込んでいく時のわくわく感もなかなか楽しい。

大学時代、初めての一人暮らしって本当に不安で、最初の頃は絶対に違うグループだろっていうひととでも寄り添うくらい寂しいもんですよね。そこにするっと入っきた「誘い」。現在パートで犯罪を犯罪らしく描いておらず、むしろ意図的に罪の意識と結び付かせないようなシチュエーションで描いている。

現実味のないその行動が、逆に過去編の酷さを際立たせていて怖かった。でも一番どきどきしたのは翌日の椎名の行動でした。しゃべりすぎだろダメ主人公(笑)。

別の伊坂作品の話になりますが、お友達のブログで「リンク処理がうまい」と表現されてて、それだ!と思わず手をたたく。伊坂さんは伏線の使い方がきちんとしていますよね。広辞苑とか神様とか、登場人物が納得するための伏線、理由ではなくて、読者だけにつながりを見せる伏線。作品タイトルのように、よくわからない取り合わせにも必ず誰かにとっては意味があるものだという ささやかな主張を感じます。

で、この作品は映画化されて、劇場公開された訳ですが…瑛太さんがハマり役すぎる…!その昔どっかの雑誌でウォーターボーイズキャスト(森山未來くんか香椎由宇ちゃんかどっちかだった)と対談した時に「冗談で国籍偽ったら信じられた」というエピソードを語っていたのですが、なるほどなあと思いました。DVDになったら見たいです。