劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 感想 その1

絵が綺麗な映画でした(笑顔)。


…一番素直な感想は「えええぇえええ」です。
意外性はあると思います。動きのカッコよさにどきどきもしたし、脚本(台詞)にほろりとくる部分もある。歴史的事実を絡めて、面白い作品に仕上がっているとは思うけど、「鋼の錬金術師」の話として納得できなかった。


テレビシリーズの最後で その世界観の基盤でもあった等価交換を「子どもの理屈」だ「弱者が自分を慰める言い訳」だと否定したり、「世界の法則ではなく 再会するための約束」としたことが尾を引いているのかもしれない(苦笑)。


色々と思うところがあるのですが、ひとまずキャラごとに分けて頭の中でまとまってる分。


     *
・* 以下ネタバレ *・
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アルフォンス・エルリック
良くも悪くも 劇的成長を遂げたひと(…)。
登場シーンは良かった。数年前の始まり(テレビシリーズ)を彷彿とさせるカットですよね。


何かを求めて砂漠を行く赤いコートの少年。でも、小さな足跡は ひとりぶんだけ。
…そんな切ないことを考えたのは束の間、飲み水が無くなったアルが、砂漠のど真ん中であろうことか「井戸」を練成して呆気に取られてしまいました。その砂漠の土壌の水分がどのくらいか知りませんけど、噴き上げさせた「不必要な量の水」を身体いっぱいに浴びて無邪気に可愛い笑顔をしてる こ の 子 は 誰 。


…と、初っ端から「この子はアルフォンスの皮を被った別人だ」と脳内で現実逃避を始めてしまうくらいショックでした。この行為だけで魂が半分抜けた。


兄の腕を代償に鎧の姿で生きたり、何千何万のイシュヴァールの民とリオールの街の軍の兵士を犠牲に練成された 賢者の石として生きたり、最終的には兄の存在全てをかけて練成された身体で戻ってきた子でしょう。4年間の記憶がなくても、周りのひとは そういう彼の命に関する過程を教えてあげなかったのかなぁ。


そういう重いものを背負わせたいとか、前と全く同じように育って欲しいと思ってた訳じゃないけど、優しくてひとを傷つける事や犠牲にすることにあんなにも敏感だったアルが好きだったので、目の前でぼろぼろになっていくラースを見ても手助けもせず涙ひとつ流さないアルには 違和感があります。


あと、納得いかないのが彼の錬金術
手袋に書いた練成陣があるので、練成陣なしで何かを練成している訳ではない(=真理の記憶はない / 自身が構築式ではない)のですが…そうなると、練成に使う構築式って、対象ごとに違うんじゃないの?という疑問が。


砂漠の中の井戸(土と水)、リオール街中の竜巻(空気)、建物(土)と少なくとも三つの元素を対象にしたけど書き換えた様子はなく、極めつけは自らの魂の分解(?)と定着。何でもできてしまう魔法じゃないのが錬金術の魅力だと思うだけに、この辺のオールマイティさが気になりました。後から判明することですが、魂を定着させた鎧の中には(門を通る間に潰れたとはいえ)人間が入ったままだったというのも恐い。


後半(エドと共闘する頃)は ちょっと違う印象だったので、これはまた後日。


●アルフォンス・ハイデリヒ
作中一番切なかったひと。
彼が階段でエドを突き飛ばして「自分の生きた証を残したい」って言ってた時は「生きてるうちにロケット技術で歴史に名を残したい」だと思っていたのですが、そうじゃなかった。


「生きた証」は、死んでしまうから じゃない。
自分の手で作ったロケットによってエドを元の世界に帰す事ができれば、例え向こうの世界に自分がいなくても 「帰ってきた」という事実に関わっている自分は、夢の中の存在を脱却する。こちらの全てを「夢の世界かも」などと言うエドに対して、アルフォンス・ハイデリヒという人間が実在する事を証明したかったのではないでしょうか。


それを踏まえた上で、もう一度最初の エド錬金術世界の話を聞いて楽しそうに笑ってるハイデリヒを観ると、凄く切ない。ああやって笑うのは、エドのこと、彼の語る別の世界のことを信じていないのではなく、いつまでも ここで生きようとしないエドへの、彼なりの諭し方だったのかも。


ホーエンハイム
自分を犠牲にしてでも 息子を元の世界に帰そうとする気持ちはわかる。それが彼のエドへの(ひいてはアルへの)愛の形なんだと思う。でも、だったら せめて母親を失って人体練成をしたような子の、その目の前で自害はしてくれるな とも思う。


しかし錬金術の使えないはずの世界で、どうやって門が開いたのか。あのひと間違いなく「エンヴィを門に練成する」って言いましたよね。この辺はエッカルトの魔法(魔術)との違いも曖昧だったように思います。


●ノーア
テレビアニメ版ロゼの焼き直しのような子だなぁと思いました。
結果的に、ヒューズがエドに忠告した「ジプシーは男を騙して財布を盗む」と あまり変わりの無い行為をした事が残念でした。協会に協力する事を拒んで、エドに助けを求めて匿われたのに、その協会の指示に従って 眠るエドの頭の中を覗き見る。記憶や知識を盗んでおいて、自分では門を開けないと分った途端 今度はエドに「連れて行って」と言う。良くしてもらった礼も裏切った謝罪もなく その言葉を口にできる傲慢さに閉口しました。


そう言えばアルフォンス・ハイデリヒが車で相乗りした時にじっと見つめていたり、吐血した時に彼女とアイコンタクトしていたりしたので、後にアルフォンスが「時間が無い」と鬼気迫っていたのは、寿命か何かをノーアに観てもらったのかも知れない と思いました。千里眼の能力があまり役立つシーンが見当たらなくて無理やり予想しただけなんですけども。不幸な境遇の中、せっかく与えられた力なのに。


…長いなぁ。
全体の流れの感想にできればよかったんだけど。


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劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 感想 その2 - * c-lovers. *